【栞録】リバース(湊かなえ)|真実が映す光と影

栞録

作品情報

リバース
著者:湊かなえ
出版社:講談社
刊行年:2015年
ジャンル:推理小説

物語温度:停滞した熱が、ときおり燃え上がっては静かに沈む

※本記事は、物語の核心に触れない範囲で内容に言及しています。まっさらな状態で物語と出会いたい方は、ご注意ください。

章序

その人は自分にとっての一番の友人。
だけど、そう思い込んでいるのは自分だけなのでは。

ふとそんなことを考えてしまったことのある人は、少なくないのではないだろうか。

だが、それを確認する術すらもうなかったとしたら。

過ぎ去った出来事には、すべて理由があったのかもしれない。
けれど、人はもうそこへ戻ることはできない。

真実はときに救いにもなり、刃にもなる。

物語に触れて

一切無駄のない表現で、呼吸をするかのように入り込んでくる文字の海に、私は溺れた。

文章は一切無駄がなく洗練されていて、静かに読者を物語の中へ引き込んでいく。
サステインのようなひりひりとした不穏な空気が、終始途切れることなく漂っていた。

登場人物たちは皆どこか現実にいそうで人間らしさが垣間見え、その距離の近さが没入感をいっそう深めている。

読み進めるほどに確信めいた予感が強まっていくのに、それでも結末は予想の外側にあった。

物語が終わりに差し掛かったころ、頭の中で点と点がつながりはじめ、読む速度は自然と落ちていった。

読み終えたあと、行き場のない感情だけが、しばらく心の中をさまよっていた。

胸の奥に留まった一文

でも、わたしは……、透明だと思った。
視界はぼやけ、テーブルの上に落ちている水滴を、グラスの痕をぬぐうように指でこすった。
コーヒーを淹れてもらおう

※印象に残った理由は記載しておりません。
 ぜひ実際に読んで、その温度を感じてみてください。

物語で感じた揺らぎ

全体を通して無駄がなく、終始強い没入感があった。

強いて言えば、人が涙する場面だけはやや情緒が前面に出ているように感じられ、もう少し抽象的に描かれていてもよかったのではないかと思った。

それでも物語の流れを損なうものではなく、大きな揺らぎは感じなかった。

物語の中で出会った言葉

空疎(くうそ):中身が満たされないまま、どこか虚しさを含んだ状態。

朴訥(ぼくとつ):飾らず素直で、口数は少ないが誠実な人柄を表す言葉。

読後に残った感覚

私は、この物語の結末を確かに見届けたはずだった。
すべてが精算され、馴染みのある柔らかな空気の中で終わるのだと思っていた。

しかし読み終えたあと、どこか落ち着かないモヤのような感覚だけが心に残り続けている。

晴天の向こうから、どす黒い雲が静かに顔を出しているようだった。

栞の結び

真実とは見る角度によってさまざまな姿に変化するものだと思った。

『リバース』は、過去に起きた出来事の真相だけでなく、その後も消えずに残り続ける感情の形を描いている。

すべてが明らかになったあとも、何かが終わらずに残り続けているように感じられた。

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