【栞録】あと少し、もう少し(瀬尾まいこ)|襷でつなぐゴールの先に

栞録

作品情報

あと少し、もう少し
著者:瀬尾まいこ
出版社:新潮社
刊行年:2015年
ジャンル:青春小説

物語温度:じりじりと燃え、ところどころ燃え上がる

※本記事は、物語の核心に触れない範囲で内容に言及しています。まっさらな状態で物語と出会いたい方は、ご注意ください。

章序

多感な時期にもがき苦しむ少年たちの物語。

目の前に大きな壁が立ちはだかったと思えば、ただただ無力を痛感するばかり。
子供のころ誰もが経験をしたことがあるのではないだろうか。

だが、何かに必死で手を伸ばしている姿ほど、見ているこちらの胸を熱くさせるものはない。

たとえどんなにかっこ悪く映ろうとも、その姿は美しい。

それはみんなのため。
そして、自分のために。

物語に触れて

子供の頃のどうにもならないもどかしさや、それに抗おうとする必死さが思い出される物語だった。

駅伝という題材が物語の構成とうまく嚙み合っていて、自然とめくる手が進んでいく。

登場人物は多いが、それぞれの思いや輪郭がするりと頭に入り、すぐに馴染んでいった。
物語のところどころに人の思いやりが散りばめられていたので、何度もすがすがしい気持ちになった。

ときにぶつかり合いながらも、ただ襷をつないでいるだけではなく、見えないところで彼らは心もつないでいた。
その切実さに触れるたび、目頭が熱くなる場面が多々あった。

胸の奥に留まった一文

「俺は吼えた」
「こんなに優しい中学生を初めて見たなと思って」
「ちゃんと病院行ったってことは、帰りにジャンプを買わないとね」

※印象に残った理由は記載しておりません。
 ぜひ実際に読んで、その温度を感じてみてください。

物語で感じた揺らぎ

まっすぐな物語だったからこそ、ところどころで台詞の輪郭が少し作られているように感じる場面があった。

人物の印象がわずかに揺れている箇所もあり、そのたびに物語の中から少しだけ現実へ引き戻される感覚があった。

だが、その引っかかりを含めても、彼らのひたむきさが残していく熱は確かだった。

物語の中で出会った言葉

ジョグ:陸上競技においてゆっくりとしたペースで走る練習方法。

読後に残った感覚

読み終えたあと、少し物足りなさが残った。
それは不満というよりも、彼らのその先をもう少し見ていたかったからだと思う。

丁寧に積み重ねられてきた時間があったからこそ、物語が閉じたあとにも、まだ彼らはどこかで走り続けているように思えた。
その続きを見届けられないことが、わずかな寂しさとして心に残った。

栞の結び

『あと少し、もう少し』は、ひとつのゴールへ向かいながら、それぞれが自分自身の輪郭を見つけていく物語だった。

まっすぐで、泥臭くて、ときどき危うい。
そんな少年たちの時間は、読者の中にある遠い記憶を静かに揺らしてくる。

がむしゃらに進むことの不格好さと美しさを、あらためて思い出させてくれる一冊だった。

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